お知らせ
共同通信社取材による新聞報道について
2019年3月30、 31日に発行された各社新聞に、当チームの児童虐待に関する研究が紹介されました。
本研究開発はJST/RISTEX安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築領域「養育者支援によって子どもの虐待を低減するシステムの構築(2015-2019)」およびJST/RISTEX 政策のための科学「家族を支援し少子化に対応する社会システム構築のための行動科学的根拠に基づく政策提言(2018-2022)」の委託事業の一部分として行なっているものです。
https://www.jst.go.jp/ristex/pp/
https://www.jst.go.jp/ristex/examin/active/stipolicy/stipolicy.html
本研究では、児童虐待に関わった養育者の方々から、事件の背景にあった要因や、どのような支援が必要だったかについて伺うことで、今後の支援に役立つ知見を得ることを目的としています。記事の元となった研究結果は、 昨年11月に開催したシンポジウムで報告したもので、中間報告書としてJST/RISTEXのホームページに公開予定です(2019年4月下旬〜5月頃)。ただし本研究は現在も継続中ですので、結果の詳細は随時更新されています。
本調査の中間報告では、「児童虐待によって有罪判決を受けた養育者の72%に、幼少期の虐待被害などの逆境体験があった」と記載しています。このことについて、誤解を招かないために少し説明いたします。
新聞記事本文にも「こうした(被虐待)経験や環境が虐待に直結するわけではないが」とあります通り、この結果は虐待を受けた人が必ず虐待を繰り返すという意味ではありません。虐待被害を受けた児童の前向きコホート調査をまとめた先行研究(Ertem, Lancet 2000)でも示されている通り、細かい数値は調査にもよりますが、虐待被害を受けた人の少なくとも過半数は虐待を繰り返しません。また集団の特性は必ずしも個人の特性を表さないことに注意が必要です。
このことは、本調査の背景となる私共の総説「子ども虐待はなぜ起こるのかー比較行動学および脳神経科学的考察」やSciREXクオータリー9号掲載記事でも解説しておりますのでご参照ください。
本件に関する取材やお問合せは理化学研究所の広報室(http://www.riken.jp/help/media/interviews/)までお願い致します。
理化学研究所 脳神経科学研究センター 親和性社会行動研究チーム 黒田公美・白石優子